わたしって、ごっこ遊びなのかも。

 2024年9月25日に“矢作萌夏”がEP『愛を求めているのに』をリリース! EPリード曲「死に花に、生命を」はSNSに投稿されたライブ映像が総再生回数約260万回を記録した話題曲。「身内が自死したときに書いた曲」ということを明かしており、リリースを待望する声が多く寄せられていた。独自の歌詞の世界観と透明感ある歌声で、シンガーソングライター・矢作萌夏の新たな魅力が伝わる楽曲となっております。
 
 さて、今日のうたではそんな“矢作萌夏”による歌詞エッセイを3回に渡りお届け。今回は第1弾です。綴っていただいたのは、今作から8月14日に先行配信された新曲「わたしごっこ」にまつわるお話。自分よりもひとを大切に生きてきたからこそ、ふと浮かぶ「わたしが本当に好きなものってなんだろう」という問い…。みなさんもいつのまにか“わたしごっこ”をしていませんか?


おはようございます。
 
毎日、同じような時間に猫と起きて
ベッドメイキングもしないまま
買い溜めておいた“おつとめ品”のフルーツを胃に入れる。
最近流行りの、木みたいな匂いのディフューザーが香っている。
これは調子のいい日で、それっぽく、
自分にとって良いことをしてるんだろうなぁ、と思えるんだよね。
 
だからこそ、万札で楽しむテーマパークだとか、始発で帰るときの電車に詰め込まれたサラリーマンたちを新鮮に感じるのかも。住めば都? 日常の刺激てきな?
 
そんなことを考えながら、昨日の枕によって造られた寝癖をシャワーでほどいて、
目も鼻も口もひとつしかないのに、わんさか集まった化粧品の精鋭たちでかわいくなる。
紫外線をこれっぽっちも入れまいと閉め切ったカーテンの隙間から、窓の様子をうかがう。
湿気やば。低気圧。と呟いて、せっかくまっすぐにした髪の毛をくくってしまうのかぁ、というちょっとばかしの悲しみをこめてポニーテールをむすぶ。
 
朝の寝起きの自分はゴミ箱へ捨てて、いつもの私。これが私。
 
いつでも、自分よりもひとを大切に生きてきた。
どういうことかというと、とても気負いやすく、気遣いやすく、気疲れしやすいということ。
だから、ひとと逢うときには、その人のファッション性だったり、その人の身長を考えて靴をえらぶ。
その日は、スニーカーを履いた。
 
 
 
ふと、わたしの日常を振り返ると、不思議がたくさんあった。
 
みんなが持ってる流行りのものに埋め尽くされていて、
それって、ほんとうに私が好きなものなのかな。他人が決めた好きじゃないのかな。
誰かが求めてるわたしを演じたい。ならないといけない。というか、なりたい。
常に嫌われたくなくて、おいていかれたくもない。飽きられたくもない。
でも、わたしが本当に好きなものってなんだろう。
 
わたしって、ごっこ遊びなのかも。
 
誰かが良いと言っていたから、それっぽいから、という理由で集めたものではなく、
わたしが選んだ好きで日常を埋め尽くしたい。自分で答えを探したい。
歳をとって、最期に振り返ってみたわたしが、わたしになるように。
 
でもまだきっと、わたしもあなたも、わたしごっこ中。
 
ぜひ、たくさん聴いてください。
 
<矢作萌夏>



◆紹介曲
配信シングル「わたしごっこ
2024年8月14日リリース
作詞:矢作萌夏
作曲:矢作萌夏

◆EP『愛を求めているのに』
2024年9月25日発売
 
<収録曲>
1 : 満たされない
2 : I was born to love you
3 : わたしごっこ
4 : 18歳のわたしへ
5 : 死に花に、生命を