ただそれだけのはなし

 2025年2月5日に“センチミリメンタル”が初のセルフカバーアルバム『for GIVEN』をリリース。今作はCD2枚組のアルバム。DISC1には、TVアニメ『ギヴン』に登場するバンド“ギヴン”と“syh”に提供した楽曲のセルフカバーを全10曲収録。DISC2には、2024年11月に開催されたライブイベント「ギヴン-海へ-」のライブ音源が収録されております。
 
 さて、今日のうたではそんな“センチミリメンタル”の温詞による歌詞エッセイを2週連続でお届け! 今回は第1弾。綴っていただいたのは、収録曲「冬のはなし」のお話です。「冬のはなし」という言葉と向き合ってみたとき、気づいた思い。そして感じた自身の使命感とは。ぜひ歌詞と併せて、エッセイを受け取ってください。
 

 
冬のはなし」という曲の制作を始めたのは2018年のことだった。TVアニメ『ギヴン』の劇中歌として制作を始めた。
そんな中実は、作り始めるにあたってひとつ悩ましいことがあった。
タイトルだけ先に決まっていたのである。
原作に『冬のはなし』とタイトルが記載されているため、詞曲ともにこのタイトルに合う内容にしなければならなかった。
 
楽曲のタイトルとは言わば人の名前と同じで、そのものを表す大切なもの。考え、飲み込み、馴染ませ、自分のものにしなければ魂や体温の存在する楽曲にならない。なのでこの『冬のはなし』を自分から出てきた言葉と同じくらい理解する必要があった。
 
今までの僕は自身のアーティスト名の「センチミリメンタル」に準えて、風景描写や季節的な表現よりも、とにかく精神面の表現を色濃く描いてきた。
 
冬のはなし、という余白のある言葉をどういった捉え方で行こうか、と考えながら、歌詞の断片をいくつも残してあるメモを開くととある言葉が目に入った。
 
溶け損ねて
日陰にいつまでも残る雪みたいな想いを
 
昔、車を運転していた時のこと。
温かい日差しの気持ち良い日だな、と思っていたが、よく見渡すと日陰にはかなり雪が残っていた。
それを見た時、思い出す人がいた。
あぁ、もう溶け切ったと思っていた想いも、まだ心の翳った部分に冷たく残っていたのか、と気づいた瞬間だった。その時にメモをした言葉だ。
 
そのメモを見て、一気に書き上げたのが「冬のはなし」だった。
 
人は別れを乗り越えて生きていける、いや、乗り越えれなくても、生きていけてしまう。世界中でこの一瞬にも様々な別れが訪れていて、当事者以外からしたらそれは別れが来たのだという、ただそれだけのはなし。
みんな、なんてことない顔をしているように見えて側からは見えない心の日陰に溶けきれない雪を抱えていたりする。
 
僕はその冷たく残る雪に触れたいと思う。
あなたの抱える、ただそれだけのはなしに耳を澄まし、話相手になれたらと思う。
きっとそれが僕の使命であると、「冬のはなし」を作る過程で改めて教えてもらった気がする。
 
<センチミリメンタル・温詞>
 


◆紹介曲「冬のはなし
作詞:温詞
作曲:温詞
 
◆セルフカバーアルバム『for GIVEN』
2025年2月5日発売