音楽はやさしい

 2024年2月14日に“センチミリメンタル”がニューシングル『スーパーウルトラ I LOVE YOU』をリリースしました。タイトル曲は、2部作の前編となる『映画 ギヴン 柊mix』主題歌。同映画は2019年にTVシリーズが放送され、2020年にアニメ映画が公開された『ギヴン』の続編で、主人公・真冬の幼なじみである鹿島柊と八木玄純にスポットを当てた物語。センチミリメンタルは、同TVシリーズのOP曲となった「キヅアト」及びアニメ映画主題歌となった「僕らだけの主題歌」に続いての起用で、今回も新曲を書き下ろし!
 
 さて、今日のうたではそんな“センチミリメンタル”の温詞による歌詞エッセイを2週連続でお届け。今回は【後編】です。綴っていただいたのは、シングル収録曲「月を食べる」にまつわるお話。どこまでも真っ直ぐな愛の歌「スーパーウルトラ I LOVE YOU」のカップリングに、屈折した愛の歌を入れたいと思ったその理由は…。歌詞と併せて、エッセイをお楽しみください。



僕は変わり者だった(らしい)。幼い頃は特に。
幼少期の頃を記録してあるビデオを見ると、テーブルの上で突然ダンスを踊り出したり。いとこ2人と自分の兄が3人で一緒に遊んでいる時、1人でよく分からない遊びをしていたり。ちょくちょく奇行の目立つ子だった。
 
小学生になる頃にもそれらが落ち着くことはなく、授業中に髪の毛を切り出したり、突然授業中に教室を出て空き教室に逃げ込み鍵を掛けては、「天気がいいからへ長調の曲が浮かぶ」とか言って出てこなかったり。
 
そんなことをした記憶は全くないのだけれど、そんな感じの子だったらしい。
確かに、大概みんな“小中学校からの友達”が1人や2人はいるものだと思うけど、僕にはいない。そう思うと、聞かされる自分の幼少期の時の変わり者エピソードたちにも頷ける。
 
でも、周りに人がいなかったわけではないことは覚えている。
休み時間に教室に置いてあるオルガンや音楽室のピアノを弾くとみんな「あの曲弾いて」とか「これどうやって弾くのか教えて」と寄ってきた。合唱などは基本いつも伴奏に選ばれたから、練習時にみんなを取りまとめていたりもした。
 
音楽をしていると、僕はこんなにもみんなに認めてもらえるんだと、そういう自覚があった。
音楽は、変わり者の僕を“普通の人”として扱ってくれた。
 
ここまでは僕の変わり者のエピソードだ、
でも、僕はこう思っている。
正直、人間って、みんなどこか変である。
見られたくない一面や、汚い、恥ずかしい、カッコ悪い、最低な一面が、きっとどこかにある。
どこまでも普通の感覚で、間違いのない清廉潔白な聖人君子などいない。どれだけそうなりたいと願っても。
 
近年のスマートフォンなどによる映像や写真、記録媒体の進化と普及や、SNSでの圧倒的な拡散力で、そういった見られたくない部分を白日の元に引き摺り出して攻め立てるようなことが毎日のように行われている。
 
この現状をなんだかなぁ、と思う。
 
その点、音楽はやさしい。
いろんなジャンルがあり、いろんな内容が歌われている。
もちろん、人には言えないようなことを吐露する歌もある。
 
みんな、そういう存在が欲しいのだと思う。無条件に自分を受け入れてくれるような。
そして、音楽はそれになりうると思う。
僕は音楽に自分を受け入れてもらったので、僕も“誰も迫害しない音楽”をしていきたい。
 
「月を食べる」という曲は「スーパーウルトラ I LOVE YOU」のカップリング曲である。
「スーパーウルトラ I LOVE YOU」はどこまでも真っ直ぐな愛の歌なので、その裏面には屈折した愛の歌を入れたいと思いこの曲に決めた。
どんな愛も迫害しない、そんなSingleにできたらと願いを込めてこの曲をセレクトした。
どちらもでもいいし、どちらかでもいい。
あなたに寄り添う作品になればと、僕はいつも通りそう願っている。
 
<センチミリメンタル・温詞>


◆紹介曲「月を食べる
作詞:温詞
作曲:温詞

◆ニューシングル『スーパーウルトラ I LOVE YOU』
2024年2月14日発売