手を繋いで海へ

 2025年2月5日に“センチミリメンタル”が初のセルフカバーアルバム『for GIVEN』をリリース。今作はCD2枚組のアルバム。DISC1には、TVアニメ『ギヴン』に登場するバンド“ギヴン”と“syh”に提供した楽曲のセルフカバーを全10曲収録。DISC2には、2024年11月に開催されたライブイベント「ギヴン-海へ-」のライブ音源が収録されております。
 
 さて、今日のうたではそんな“センチミリメンタル”の温詞による歌詞エッセイを2週連続でお届け! 今回は第2弾。綴っていただいたのは、収録曲「海へ」にまつわるお話です。自身にとって“海”とは、どんな存在、どんな場所なのか。それを歌にどのように描いたのか…。ぜひ歌詞と併せて、エッセイを受け取ってください。
 

この世界のありとあらゆるものは、回っているなぁと思う。
日々は朝と夜を繰り返し、12ヶ月の中を回っている。季節も回る。
その中で出会いと別れをぐるぐると繰り返し、いろんな感情が巡り、そんな僕らが生きるこの地球も回り、その地球も太陽の周りを回る。
 
水の循環、というものを昔授業で習った。きっと誰しもみんな教わったことだと思う。
海などから蒸発した水が上空で雲になる。その雲が雨を降らし、大地に染み込む。湧き出た水は川をくだり、やがて海へたどり着く。
 
「海へ」というタイトルを目にした時、このサイクルのことを思い出した。
 
前回のコラムでもあったように、「海へ」という楽曲はアニメ『ギヴン』シリーズの完結編でもある『映画 ギヴン 海へ』劇中歌として提供した楽曲で、原作漫画にすでにタイトルが出てきていたため、そのタイトルに向き合う必要があった。
 
「海へ」。
 
昔からなぜか海が好きだった。
泳げないのに。波にも乗らないし、砂浜で肌をこんがり焼くようなタイプでもないのに。ただ、人気のない海に向かってドライブするのが、到着し、静かに海をぼーっと眺めるのが好きだった。
 
目まぐるしく回る日々で、世界で、
海はひとつ流れ着く場所のような感じがした。
忙しないサイクルの中で、ひと呼吸おける場所。
心を少しだけ休ませてあげられる場所。
 
潮風に髪をくすぐられ、戯れ合うように頭を撫でられているような気持ちになる。
波音も、柔らかな話し声のように感じる。言葉もない、海との対話。
 
そんな、憩いのひとときを過ごす。
 
ずっと海にいられるわけでもないから、帰路につき、僕はいつもの日常のサイクルの中に戻っていく。
何度でも、海に行けたらと思う。
人生の中で巡り逢う歓びや哀しみ、そして大切なものと手を繋いで、海へ。
 
<センチミリメンタル・温詞>
 


◆紹介曲「海へ
作詞:温詞
作曲:温詞
 
◆セルフカバーアルバム『for GIVEN』
2025年2月5日発売