私たち、もうサヨナラしなくていいんだね。

「またね」って言葉 また会えるんだ
私たち もうサヨナラしなくていいんだね
「またね」/藤田麻衣子


 2019年3月20日に“藤田麻衣子”がニューアルバム『wish』をリリースしました。今日のうたコラムでは、その収録曲から、失恋ソングとも、片想いソングとも、両想いソングとも言い切れないけれど、たしかにラブソングである「またね」をご紹介いたします。まず「またね」って言葉で、気軽に別れの挨拶をする【現在】シーンから幕をあける歌。
 
 みなさんなら、誰かに「またね」と手を振るとき、どんな気持ちであることが多いですか? 別に“二度と会わない”と決めている場合じゃない限り、あまり気にしないことが多いのではないでしょうか。友達だから。永遠のサヨナラじゃないから。「またね」はそのまま「また都合が合うときにでも会おうね!」くらいの意味合いだと思います。

友達にはなれないとわかった
むなしい期待してしまうから
忘れられないまま
一人前に進めなくなるから

両腕で精一杯
その胸を押して
遠ざけて 断ち切って
必死にがんばったんだよ

「またね」って言葉 言わないように
私たち もうサヨナラ選んだ二人
もう会わないと何度決めて
泣いただろう でも本当は会いたかった
「またね」/藤田麻衣子

 しかし時には、簡単に「またね」とは言えないこともあるんですよね。それがかつての<私>でしょう。歌は【現在】から【過去】の回想シーンへ移ります。そこに見えるのは、まだ<友達には>戻れそうもない二人。<もうサヨナラ選んだ二人>です。ではなぜ、あの時の<私>は<「またね」って言葉 言わないように>と、堪えたのでしょうか。
 
 大きな理由は3つ。1つは<その胸>に嘘をつきたくなかったから。世の中には「またね」と別れておきながら、もう二度と会わないひとだってたくさんいます。だけど<私>はちゃんとお別れしたかった。希望なんて匂わせたくなかった。それは同時に、自分自身も<むなしい期待して>しまいたくなかったからという、もう1つの理由にも繋がります。
 
 二人のラストシーンが脳内再生されたとき、やっぱり「またね」という言葉から“また会える可能性”を抱いてしまいますもんね。そしてもう1つは「またね」という言葉に本音が滲んでしまわないようにです。本当はまた会いたかったし、まだ愛していた。でもだからこそ「またね」をグッと堪えて、<両腕で精一杯 その胸を押して 遠ざけて 断ち切って 必死にがんばった>のです。二人のために“言わない”選択を貫いたのです。

あれからもうどれくらい経つかな
髪型もお互い変わったね
ねぇこんなふうに普通に
話せる日が来るなんてね

あんなにかき乱された
この胸が今は
穏やかに 見つめられる
甘酸っぱさ残しながら

好きな気持ちは形を変えて
私たち もう本当の友達になったね
なんか少しね 淋しいね
だけどね きっと嬉しいことなんだよ
「またね」/藤田麻衣子

 さて、歌が進み、シーンはまた【過去】から【現在】へ。時は随分と流れ、なんと二人には<こんなふうに普通に 話せる日>が来たのです。絶対に<友達にはなれないと>思ったはずだったのに。あんなに<かき乱され>泣いたのに。今、お互いの胸の中にあるのは<穏やか>で<甘酸っぱ>くて、少し<淋し>くて、だけど<嬉しい>気持ちです。

 そんなふうに<本当の友達>になることができた“今”があるのは、あのとき<私>が言わなかった言葉があるからです。それが「またね」のひと言。二人のために、前に進むために、わざと「またね」とは言わずにサヨナラをした。その“言わなかった言葉”こそが<私たち>の<好きな気持ち>を新しい形で繋いでくれたように思えますね。

「またね」って言葉 また会えるんだ
私たち もうサヨナラしなくていいんだね
胸の中には温かい この気持ち
広がってく 笑顔になれる

好きな気持ちは形を変えて
私たち もう本当の友達になったね
なんか少しね 淋しいね
だけどね きっと嬉しいことなんだよ

またね
「またね」/藤田麻衣子


 そして今<私たち>は、あの頃言えなかった「またね」を、笑顔で、温かい気持ちで、本当の友達として、口にすることができるのです。別れは淋しいけれど、でも、人生に残る大切なものはそれだけじゃない。そう教えてくれるのが、藤田麻衣子「またね」ではないでしょうか。この曲を聴いているあなたも、まだ「またね」とは言えそうもない大切なひとと、いつか優しい再会を果すことができますように。

◆紹介曲「またね
作詞:藤田麻衣子
作曲:藤田麻衣子

◆メジャー4thアルバム『wish』
2019年3月20日発売
[初回限定盤] VIZL-1564 ¥4,700+税
[通常盤] VICL-65166 ¥3,000+税

<収録曲>
01 出会えただけで
02 これからも
03 in fact (Self Cover)
04 wish ~キボウ~
05 何度も何度でも
06 またね
07 始まり
08 ハピネス
09 気持ちの整理できるまで
10 テントウ虫 

Bonus Track 
トライアングル(Piano ver. / duet with 奥華子)
※初回限定盤のみ