戻りたい、もう戻れない。

藤田麻衣子
戻りたい、もう戻れない。
2023年5月24日に“藤田麻衣子”がニューアルバム『Color』をリリースしました。今までリリースしたオリジナルアルバムでは全曲の作詞・作曲を藤田麻衣子自身が手掛けていましたが、今作では自身の手による先行配信シングル「漆黒」、橋口洋平(wacci)が楽曲提供した「鏡よ鏡」、世界的に活躍するSUNNY BOYが作曲を担当した「シンプル」をはじめとした、他のミュージシャンからの提供曲、THE IDOLM@STER CINDERELLA GIRLSに提供した「always」のセルフカバーなど、全10曲が収録。 さて、今日のうたコラムでは最新作を放った“藤田麻衣子”による歌詞エッセイを3日連続でお届け。今回は第1弾です。綴っていただいたのは、今作の収録曲 「 戻りたい、もう戻れない 」にまつわるお話。ズルいとわかっているけれど、切れなくて、離れられなくて、「友達になりたい」と言ってしまう。そんな恋のなかで葛藤しているあなたへ。この歌詞とエッセイを受け取ってください。 友達になりたいと 言ったのは私の方 離せなくて どんな形でもいいから 繋がっていたくて… 別れてからすぐに友達になるなんて、できるわけないのに「友達になりたい」と言ってしまったことがあった。たぶん何度かあった。もう会えなくなるのも、話せなくなるのも、淋しすぎて。今思い出しても胸が痛くなる。しがみつくというのは、なんて哀れなんだろう。 でも、覚えているのは友達には戻ってくれなかった人。付き合う前みたいに、また笑い合いたいと何度も願ったけれど、それは叶わなかった。どんなに会いたくなっても会えないなんて。ひょっとしたら会えるかな、なんて期待しても全く会えなくて。そんな日々はなんて苦しいんだと思ったけれど今となっては、諦めがついて良かったなと思う。ある意味あれは誠実さと優しさだったんだなと。 友達になってしまったら、結局は期待して諦めきれなくて、ずっとつらいまま。それでも、好きな人と別れを機に突然会えなくなるなんて、まだ好きな方にとってこんなつらいことはない。だから友達という都合の良い言葉にすがってしまう。 友達だったら、どこで誰と何をしてようが別にいいし(時々友達も束縛したい性格の人もいるけど…)。恋バナを聞いてもワクワクして楽しいはずだし、とにかく平気。苦しくなんかならない。モヤモヤ、イライラ、ズキズキするのは好きな証だと思う。 もう会えなくても、友達になってよく会える仲になってしまっても、どちらにしても失恋してもう通じ合えないというのはつらいのだ。時の流れが忘れさせてくれるのを待つか、新しい恋によってすっかり忘れさせてもらうしか、出口はない。 別れても連絡をとっていた人、あれはなんだったんだろうと今は思う。友達と言いながら結局未練がある関係。新しい恋人がどちらかにできれば、昔の恋人という友達なんかはっきり言って邪魔でしかない。気にしないという人もいるだろうけど。誰かをいやな気持ちにさせてまで、まだ繋がっていたいってなんだろうか。新しい相手に失礼だし、綺麗さっぱりしなさいよと言いたい。 時間が経った今は冷静に見つめられるけれど、その時はいろんなものが離せなかったし、切りたくなかったし、未練があった。ズルいけれど切れなかった。けれどズルい場所には幸せもなかった。 戻りたい、もう戻れない。それは、もう自分には必要なくなった場所なんだと思う。その先にきっと、新しい幸せが待っているはずだと私は信じている。 < 藤田麻衣子> ◆紹介曲「 戻りたい、もう戻れない 」 作詞:藤田麻衣子 作曲:MONJOE・SUNNY BOY ◆メジャー7thオリジナルアルバム『Color』 2023年5月24日発売 配信サービス一覧: https://jvcmusic.lnk.to/fujitamaiko_color <収録曲> 1. 漆黒 2. タンポポ 3. 戻りたい、もう戻れない 4. 鏡よ鏡 5. できるなら... 6. always 7. 足音 8. 美女と野獣 9. ありがとう 10. シンプル