正しい夜明け

ビレッジマンズストア
正しい夜明け
2025年6月18日に“ビレッジマンズストア”が、バンドキャリア20周年を記念した初のベストアルバム『re:Rec BEST 「遊撃」』をリリースしました。ほとんどの楽曲を現メンバー5人で演奏・レコーディングした再録ベストアルバム。Disc1、Disc2ごとにテーマがあり、何かとの繋がりを歌ったものがDisc1 遊 、“攻撃的”なのがDisc2 撃 となっております。 さて、今日のうたではそんな“ビレッジマンズストア”の水野ギイによる歌詞エッセイを3週連続でお届け。最終回は収録曲「 WENDY 」にまつわるお話です。前々回、前回に引き続き、やはり怒っているおれ。主人公に選ばれずとも、無敵になる方法があるならそれは…。ぜひ歌詞と併せて、エッセイを受け取ってください。 9年前、おれは怒っていた。鶴舞線赤池行きにである。 愛知県には鶴舞線という電車がある。名古屋市と豊田市を結ぶこの路線はだいたい5分に1本電車が到着する。あら、そこそこ使い勝手良さそうじゃない。そう思う人もいるかもしれない。しかし騙されてはいけない。こいつは都会至上主義の権化、一極集中の手先。 まずこいつは2本に1本、途中の赤池駅で終点となる。豊田市駅行きはギュンギュンに人が詰まっていても赤池行きはスカスカである。 そしてその赤池駅から先は名古屋の地下鉄でなく地上に出て名鉄豊田線というのに切り替わるのだが、そのタイミングで乗車賃が一気に倍になる。豊田市駅から名古屋の栄まで、当時810円。おれの労基ガン無視漫画喫茶アルバイトの時給より高い。3時間働いてやっと1度往復できる。あまつさえ鶴舞線の通路はめちゃくちゃ暗い。ジメジメしていて壁がじっとりしている。高い運賃はどこに使われているのか。 これらを総合して結論付けた、 名古屋市は豊田市民をナメている。 そして同時にこうも思った。きっと“主人公”というものには、なるんじゃない、選ばれるんだ。環境に、タイミングに、生まれ持った輝きに。選ばれた誰かは世の中が味方してくれるんだ、自分はモブにもなれない、どんよりした暗い地下鉄に消えていく、ちっぽけな存在、なのかもしれない。 主人公は奇抜な服を綺麗に着こなし、ファンタジーならば空も飛べよう。歩く場所はいつも舞台で、足音は軽い。 が、なんかそれはムカつくな。全部ひっくり返すようでなんだが、ムカつくよなそれは。 今おれ鶴舞線乗ってるんだけども、好きなパンクロック聴いてるから無敵なんだよ。 誰かにとってのそれになるCD作ってるんだ。正しい夜明けってやつ。どこで聴いても輝けるように、どこで聴いても迎えに行けるように、 リード曲は首吊り人の木の下の寝床に住むピーターを待つおれたちの曲にしよう。 <ビレッジマンズストア・水野ギイ> ◆紹介曲「 WENDY 」 作詞:水野ギイ 作曲:水野ギイ ◆ベストアルバム『re:Rec BEST 「遊撃」』 2025年6月18日発売 <収録曲> 【CD Disc1 遊】 01. WENDY(20th ver.) 02. みちづれ(20th ver.) 03. 1P 04. 車上A・RA・SHI(20th ver.) 05. アディー・ハディー(20th ver.) 06. アダルト(20th ver.) 07. TV MUSIC SHOW 08. セブン(20th ver.) 09. ロマンティックに火をつけて(20th ver.) 10. きみがいれば 11. People Get Lady(20th ver.) 12. LOVE SONGS(20th ver.) 13. 眠れぬ夜は自分のせい(20th ver.) 【CD Disc2 撃】 01. 夢の中ではない(20th ver.) 02. 逃げてくあの娘にゃ聴こえない(20th ver.) 03. ビレッジマンズ(20th ver.) 04. 黙らせないで(20th ver.) 05. 御礼参り(20th ver.) 06. 猫騙し人攫い(20th ver.) 07. Love Me Fender(20th ver.) 08. 変身(20th ver.) 09. サーチライト(20th ver.) 10. 墜落、若しくはラッキーストライク(20th ver.) 11. 正しい夜明け(20th ver.) 12. PINK(20th ver.)