巡愛

yuzen
巡愛
2025年7月16日に“yuzen”が新曲「微熱」をデジタルリリースしました。同曲は、デモをSNSで投稿したところ話題に。切なくも爽やかなバンドサウンドに熱を感じる言葉が添えられており、耳なじみがいいサウンドがなぜか懐かしさを感じさせる楽曲に仕上がっております。 さて、今日のうたではそんな“yuzen”による歌詞エッセイをお届け。綴っていただいたのは、新曲「 微熱 」にまつわるお話です。<あなた>の好きなところ。生活のなかに在る<あなた>の存在、愛の形…。ぜひ歌詞と併せて、エッセイを受け取ってください。 今世じゃ足りないくらいの大恋愛は形を残さず、ゆっくりと空に上がって消える。 それはまるで冷めない夏の花火みたいに。愛おしく美しい。 「愛してる」という言葉は最初で最後、きっとこの人に使うのだろうと思った。 あなたが使う言葉が好きだった。 緩く結んだ紐みたいに優しく、すぐに解ける。 落ち着いた口調ですぐに調子を狂わされる。 眠そうな声につられて今日も眠りに落ちるのだろう。 東京は今日も忙しなく、行き交う人混みを“歩く”というよりは“流されて”いる。 あなたの体温みたいなものからはかけ離れているような冷たさに今日も心を震わせている。 「今日もがんばれ!」 ムキムキの腕の絵文字と一緒に送られてくるこの言葉で午後を乗り切り、 「おつかれさま」 湯気が立っているお茶の絵文字と一緒に送られてくるこの言葉で1日の疲れは吹き飛んだ。 明日は休みだから久しぶりに出かけよう、と僕。 明日は休みだから、とフライパンみたいな形のポップコーン生成キットを使い、ポコポコと音を立てるのはあなた。 家でもポップコーンを食べながらだとそこはもう映画館らしい。 小学4年生みたいな考えだがそういうところも好きだった。 きっと明日も午後まで寝ているのだろう。 何年経っても僕はあなたの目に、手に、恋をする。 頭ではなく、心で恋をする。 休日、親子のキャッチボール。 大きい背中が肩を濡らす相合傘。 夕飯、テーブルを囲む笑顔。 有線のイヤホン、二人で聴くモノラルの音楽。 集合時間より早く到着。あなたを“待たせたくない”。 そのどれもが“形ある愛” 目に見える必要なんかないじゃないか。 愛を与えるあなた自身が“愛”じゃないか。 <yuzen> ◆紹介曲「 微熱 」 作詞:yuzen 作曲:yuzen