the pillowsが解散してしまった。
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ヒトリエ
the pillowsが解散してしまった。
2025年1月22日に“ヒトリエ”がニューアルバム『Friend Chord』をリリースしました。今作には、先行シングル「ジャガーノート」、「オン・ザ・フロントライン」、そして、2024年11月27日にリリースし大きな話題を生んだ、wowakaボーカル、作詞・作曲の未発表曲「NOTOK」を今回、Album versionとしてシノダがボーカルを務めた、全10曲が収録。 さて、今日のうたではそんな“ヒトリエ”のシノダによる歌詞エッセイを3週連続でお届け! 今回が最終回です。今年、35年以上の活動に幕をおろしたthe pillows。彼らへの想い。彼らから受けた影響。そして、奇しくも今の自身の気持ちにフィットする今作『Friend Chord』収録曲の歌詞について、綴っていただきました。ぜひ今作と併せて、エッセイを受け取ってください。 ヒトリエのニューアルバム『Friend Chord』リリースのタイミングでこの場をお借りしてまで書くべきことであると判断したので書かせていただきます。 the pillowsが解散してしまった。 あのどこまでも拗ねて開き直ってを繰り返しながらそんな自分の弱さも全部引っくるめて前へ前へと進もうとする力強さ、そしてユーモアとユニークの間に生を受けたみたいな言語感覚が生み出すあまりに重たいパンチラインで数々のティーンエイジャーをリングに沈めて来た我らがヒーロー山中さわおさんの影響を受けないことは最早不可能で、僕自身の創作にどこまでも深々と根差されちゃってるしそういった人間があまりにも少なくなさ過ぎるように思う。随分と陰気な大人に育った自分でさえも何だか嫌いではなく今も生き続けていられるのは、思わず忘れてしまいそうな程に側にあり続けてくれたthe pillowsの歌に幾度と無く支えられてきたことに他ならず、結局こんな形で気付かされてしまうのだ。 そんな僕だから新しいアルバム『Friend Chord』に書き起こした歌詞からもきっとthe pillowsの影響が何かしら見えてくるに違いない、さてどんなもんかねと今一度読み返してみたらあまりにも拗ねっぱなしでちっとも前に進もうとしない様子にびっくりしてしまった。とにかく基本的に離別してるというか、手を差し伸べようとか全然しないし、歩き出さないし。ずっと部屋に居んなコイツって感じがずっと漂ってて、まあ実際本当に部屋からは出ないしそういう内容になった理由もちゃんとあるしそれを語るべき機会が今なんだろうけど、少しはFUNNY BUNNYのように誰かの背中でもそっと押してみては如何だろうかと思うくらいにはウジウジしていて、ま~でも結局これが僕なんだよな~と思わされる程には良く書けてるじゃんと思ったりもした。 強く憧れたものと比較してそこに到達出来ない自分、みたいのにはもう慣れたし飽きたしそれが当たり前のことだってのもわかったし、僕は僕なりに頭を捻らせて僕からしか出てこないであろう言葉を紡ぎ続けていくだけだし、僕にとってのストレンジカメレオンみたいな衝撃的な出会いがこのアルバムで誰かに起こるのかもしれないし、だからこそ続けていくことには意味があるんだよって言ってくれるのは俺の中のthe pillowsだった。 そのthe pillowsが解散してしまった。 丁度the pillowsが解散したその日原宿に行く用事があり、ゴミゴミした山手線の中で、何でもうthe pillowsが居ないのにこの世界は普通に回ってられるんだろうなと思ったら胸の中に2月の風が吹き込んで来て、とてもじゃないがやってられないような気持ちが少しだけ生まれた。 少しだけだったのは、僕がもうすっかり大人になってしまったからなのだと思う。 きっと、 僕もあなたもこれからまだまだ色んな大切なものを失っていったりするだろうし、もしかしたら人生って思ってた以上に寂しく終わっていくものなのかもしれないけど、奇しくも『Friend Chord』の歌詞はそういった出来事に対する覚悟だったり喪失感だったり取り返しのつかない気持ちだったりが書かれていることが多く、こうして僕達がメジャーの世界を10年間駆け抜けていった矢先に解散したthe pillowsの背中を目の当たりにした僕の気持ちにあまりにフィットするアルバムになってしまい、全然そんなつもりじゃなかったんだけどなあ、でもそうなっちまったもんは仕方ないもんなあ。折角だから大好きな先輩バンドの解散にかこつけてアルバム宣伝するようなそんなセコい真似する自分だって別に嫌いじゃなかったりする、そんな僕だからこそ書ける言葉が沢山詰まったアルバムだと思っていっちょ聴いてみてほしい。 あーあもっと自分の書いた歌詞の話とかいっぱいするつもりだったんだけどそれどころでは無くなってしまった。だって全然心の整理がつかないんだもの。 次はあなたがほんの少しだけでも前を向いて歩いて行く気持ちになれるような歌詞でも書いてみようかな。そんなこと僕に出来るのだろうか。出来なくってもまあ、別にいいのか。 <ヒトリエ・シノダ> ◆ニューアルバム『Friend Chord』 2025年1月22日発売 <収録曲> M1. 耽美歌 M2. ジャガーノート M3. Quadrilateral Vase M4. ネバーアンダースタンド M5. 月をみるたび想い人 M6. Shadowpray M7. NOTOK(Album version) M8. オン・ザ・フロントライン M9. おやすみなさい M10. ブルースプリングパンク