悲しみを鍋でコトコトに煮込んで

サイダーガール
悲しみを鍋でコトコトに煮込んで
2025年5月28日に“サイダーガール”が5th FULL ALBUM『CIDERPIA』をリリースしました。従来の炭酸系サウンドは感じられつつも、一度離れたメンバーたちが再度集まり、今までの“爽やか”なイメージという一言では伝えきれない厚みや温もりさえ感じられる、一皮も二皮も向けた作品となっております。 さて、今日のうたではそんな“サイダーガール”の知による歌詞エッセイを3日連続でお届け! 今回は第2弾です。綴っていただいたのは、収録曲「火鍋」にまつわるお話です。飲み会で他者に気を遣いすぎて楽しみ切れなかったり、逆に気を遣われることにまた気を遣ってしまったりするあなたへ…。ぜひ歌詞と併せて、エッセイをお楽しみください。 飲み会って脳みそ溶けちゃうくらい楽しいのに、物凄く面倒臭いし煩わしいなと思う時がある。 すごく都合が良い話をすると、自分が行きたい時は楽しくて行きたくない時は楽しくない、ただそれだけなのだと思う。 それは逆の目線もあって、僕だけが楽しんでて周りは楽しくないのに、無理やり付き合わせてるとか悪い想像ばかり考えてしまって。そうなると、飲み会って何のために存在しているんだろうとすごく悲しくなってしまったりもする。日本人らしいのかしら。 じゃあ学生の時は何して遊んでたんだろうと思ったけど、大体の休みのタイミングは学生の頃に組んでいたコピーバンドの面子と一緒に居たなァ。僕が殆ど連絡を断っているのに元気でやってるかな、なんて思うのもすごく失礼な話なのに、歳を取ると旧友は何をしているか気にしてしまう。 他人の頭の中を想像する行為は不毛だと常々感じている。大抵は悪い方向で物事を捉えてしまうから。 自分が思ってもいないことを勝手に想像されたりもする。伝え方が下手なだけで、そんなことないよと思うけど、そんなことないよ、すらまともに伝えられない。 「同じ釜の飯を食う」という慣用句があるけど、友人の友人を紹介してもらう時に初対面なのに、しゃぶしゃぶ食べに行きましょう!と提案してしまって、すごく気まずい空気が流れたことがある。 結局、僕は人の目ばかり気にして生きてきたせいで、出来る限り平均点を取れるように行動するようになった。いや、じゃあしゃぶしゃぶ誘うなよ…。 「火鍋」という曲は、そんな僕の悲しみを鍋でコトコトに煮込んだ歌詞だと思う。 大人数での飲み会で、誰か喋れてない人居ないかなとか、飲み物足りてるかなとか考えてる内に鍋の中の肉がごっそり無くなっていたり。エ~~~これ参加費払ってるのに元取れてないよ~と思いながらも、みんなが楽しんでるならそれで良いか、と自分が楽しむことを心の奥に閉じ込めて過ごしたりする。だけど、それを察した人が逆に気を遣って気まずくなったり、ア~~~もう面倒臭いです! それに、後輩とかお金をあんまり持ってこない人と飲みに行くとご飯奢っちゃうんだよォ…。無い身銭を切って奢ることにすら自分の是非を考えてしまう。どうしたらいいんだよォ。 気を遣ってもらえることは嬉しいんですけど、なんかスミマセン! って思いで溢れて帰り道メソメソしちゃうし。気を遣いすぎた飲み会の後はほぼほぼ高熱出して寝込むし。 もはや火鍋というより闇鍋状態だけど、僕のそんなみみっちい矮小な心の内を吐露している。 人間誰しも、言いづらい事を言えなかったりすると思うんだけど、そういう関係値だとあまり仲は深まらない。僕も壁を感じるとあまり近寄らなくなってしまうので、出来る限り壁は作らないようにと心がけてる。 気を遣って本音を言わないくらいなら嫌われてもいいと思って行動することが、誰かに好かれる要因なのかもなと最近は思うようにしてる。 こんな歌詞を書くと、誰もご飯に誘ってくれなくなりそうだけど、延々と愚痴のように歌詞にしたりしないので誘ってくださいね。 それではお手を拝借。 <サイダーガール・知> ◆5th FULL ALBUM『CIDERPIA』 2025年5月28日発売 <収録曲> 01.栞 02.Choose!!! 03.生きルンです 04.ヒナ 05.透明 06.火鍋 07.HELLO 08.wagon 09.夜に揺られて 10.わすれもの