鞦韆と庭の薔薇。

 2022年4月13日に“saji”がNew Digital Single「灯日」を配信リリースしました。同曲は、4月より放送開始のTVアニメ『トモダチゲーム』エンディングテーマに起用。sajiが現在までにリリースしてきた歴代のアニメタイアップソングの中では珍しく、ベーススラップから始まる、深みあるギターサウンドが特徴的なオルタナティブロックサウンドに仕上がっております。
 
 さて、今日のうたコラムでは、そんな最新作を放った“saji”のヨシダタクミ(Vo.)による歌詞エッセイをお届け!綴っていただいたのは、新曲「灯日」に通ずるお話です。彼が子どもの頃に身につけたとある工程、覚えた感覚とは…? 今作のタイトルや歌詞にもつながっているエピソードを、ぜひ楽曲と併せて受け取ってください。



突然ですが皆さんこれを読めるでしょうか。
鞦韆 (※スマホの調べる機能使っちゃダメよ)
 
これは―しゅうせん―と読みます。
馴染みのある言い方にするとブランコ。
公園に必ずあるアレです。
 
ちなみに鞦韆は鞦でも韆でも、どちらもブランコという意味があります。ぶらさがって遊ぶ器具の事です。余談ですが、ブランコは本来、中国で夜のおもちゃ(大人の嗜み)として誕生したそうで、それがいつしか遊具として広く親しまれるようになったそう。
 
話が逸れましたが何故こんな言葉を持ち出したのかと言うと、この鞦韆という言葉が僕の人間性を創造(改造)したからです。
 
僕は昔から本、主に漫画を読むのが好きで、家の中にある本はジャンル世代問わず全て読みました。両親が漫画好きであった為、たぶん家の中に本棚が10個以上はあったと思います。
 
中には当然、子供向けの漫画ではないモノも数多く存在した為、当時では意味の分からない言葉やシチュエーション、それこそ漢字なんかが出てきて、知らない言葉を調べて覚えるという工程はこの時に身につけました。
 
<難しい言葉が出てくる→調べる→使ってみたい→頑張ってインプットする>を繰り返すうちに、勉強面でも国語が得意になったし、<イヤイヤさせられているという感覚がないから>授業も熱心に楽しく受けられた気がする。
 
そんなある日、本棚の奥から『蘊蓄事典』なる古い辞書が出てきまして、中を開くと脳がちぎれそうになる位難しい漢字が大量に載っていました。
 
そのたまたま開いたページに載っていた言葉こそが<鞦韆>で、書けるようになるまでひたすら書き取りを自らにノルマとして課し、来る日も来る日も書き続けました(ちなみに今はもう韆は書けません)。
 
この、誰も知らない言葉を自分だけが使えるという感覚がとても嬉しくて、単語だけではなく使用例なんかもずっと調べては誰かに実践してみたり。今考えると相当ウザい子どもですが、この時に憶えた言葉の引き出しが、今の仕事に繋がっているので、昔の自分にとても感謝しています。
 
その時の感覚が今回の新曲「灯日」というタイトルであったり、歌詞に投影されているので気になる方は聴いてみてね。
 
人間、何が将来を支える武器になるか分からないから、とりあえずは何でもやってみるべきだなあと、ふと思い出した昼下がりの電車内にて。

<saji・ヨシダタクミ(Vo.)>