涙は必需品じゃないからこそ美しい

 2024年4月3日に“Sano ibuki”が新曲「ミラーボール」をリリースしました。同曲は、人気を博しシリーズ化しているドラマ『ソロ活女子 のススメ』シーズン4のエンディングテーマ。Sanoが同ドラマのテーマ曲を担当するのは、2021年放送のシーズン1のオープニングテーマを手掛けて以来約3年ぶり。シーズン4では、初の海外ソロ活として台湾を訪れるとのこと。ドラマに彩りを添える新曲をお楽しみに!
 
 さて、今日のうたではそんな“Sano ibuki”による歌詞エッセイをお届け! 綴っていただいたのは、新曲「ミラーボール」にも通ずるお話です。思い出すたびに、ペンを握り、曲を書く、とある記憶。そして今、Sano ibukiが思い描く自分の音楽の在り方とは…。



保育園の先生が泣いている姿を今も思い出すことがある。
 
悲しかったからなのか、悔しかったからなのか、それとも僕がおバカさん過ぎて困り果ててしまったのかは覚えていないのだけど、辛い表情の先生の涙を拭ってあげたい気持ちとなんで泣いているのか分からない困惑と、冷たく、人っこ一人いない夕暮れ、保育室前の下駄箱を何故か覚えていて、良く見る夢のように思い出しては、その度にやっぱりちょっとだけ胸が痛んで、ちょっとだけ衝撃的なものを見た興奮のようなものを覚えるのだ。
 
きっと物心がついて初めて見た、他人の"大人"が泣いた瞬間で、そして明らかに自分のことを想っての涙だった。辛そうな人がいて、助けたくて、一緒に悩みを解決したくて、そんな想いの真ん中には自分のことを大切に想う人を見つけたという嬉しさが溢れ出ていた。
 
僕のために泣いてくれる人がいるんだ。と、この人のことを大切にしなきゃ。と、心に決めたからこそ未だに脳裏に焼き付いているのだろう。
 
大人になって泣くことを恥ずかしいと言う人がいるが、僕はそうは思わない。自分を守るために大切な機能だ。
寧ろ、耐え忍び、飛び出すことなく忘れ去られてしまった涙を無視して生きていくのはあまりに寂しい。
 
大人である先生の涙に愛情を感じた自分がいるように、言葉という感情の抜け殻では伝えられない何かを届けることができる手段だ。
まあそんなことを言ってもそれが簡単に出来たら苦労はしない。泣きたくなっても泣けない時も、泣きたくても泣ける相手がいない時もある。
 
そんなとき、少しだけ心の窓にカーテンを掛けて、誰にも見られず泣ける場所に僕はなりたい。
夕暮れ時、届かなかった先生の頬に今は届くように、拭える音楽でありたいなと、弱くいられる場所でありたいと思うのだ。
 
そうしたらいつか、記憶の片隅にもあの日のことを覚えていないであろう先生が、もし名前だけでも覚えていたのなら。誇りに思ってもらえる日が来るのかもしれない。僕が取り出せるハンカチはきっとそれくらいで、あの日何も出来なかった自分にできることなのだろう。
 
だからこそ思い出す度にペンを握り、曲を書く。
きっと今日も曲を書くのだろう。
 
<Sano ibuki>



◆紹介曲「ミラーボール
作詞:Sano ibuki
作曲:Sano ibuki