SIX LOUNGE
言葉にせずとも
2024年11月27日に“SIX LOUNGE”がニューシングル「言葉にせずとも」をリリースしました。タイトル曲は、TVアニメ『BLEACH 千年血戦篇-相剋譚-』OP曲。さらに11月13日には『2024大分国際車いすマラソン』番組応援ソングとして制作された新曲「My Way」も配信リリース!
さて、今日のうたではそんな“SIX LOUNGE”のナガマツシンタロウによる歌詞エッセイを3回に渡りお届け! 第2弾は新曲「 言葉にせずとも 」にまつわるお話です。僕が知っている彼のこと。言葉にせずとも、思っていること…。ぜひ歌詞と併せて、エッセイを受け取ってください。
彼のことを僕は知ってる。
彼は無口な人間だ。
無愛想だが、世間話も少しくらいならできる。
集団行動が苦手でいつも孤立しているが、そんな彼に「最近どう?」と気を使ってくれる人もいて、でもそこには目にみえない薄い壁がそっと緊張している。
しかし孤高の一匹狼を気取りやがってと、彼を嫌う人間も沢山いる。
もちろん彼はその薄ら笑いを浮かべた陰口に気づいている。
そしてちゃんと傷ついている。
彼は何も言い返さず、遠くをみつめている。
彼の趣味は映画鑑賞で、
ヴィンセント・ギャロが監督、主演、脚本、音楽を手掛けた『バッファロー'66』が特に好きらしい。
乱暴でめちゃくちゃな主人公・ビリーが、刑務所から釈放され両親に会いに行く。しかし彼は愛されていなかった。
実家に帰る前、妻のフリをしろとダンス教室で拉致されたレイラは次第に彼の優しさを知ることになる。
この映画のラストシーンが何度みても好きなんだよな、と彼は口角を上げる。
すこしベタじゃないか? と思ったが、「僕も好きだよ、ドーナツ食べたくなるね」と当たり障りのない言葉で僕らはタバコをふかした。
行きつけの喫茶店で、ホットコーヒーをふたつ。
お店のママが出してくれるチョコレートを食べながら、なんとなく美しいと思う壁の絵画を、ぼうっとみつめては時間がすぎてゆく。
口数の少ない彼の目は時折とても饒舌で、キョロキョロとまるで世界をはじめてみる子供のようで、こっちも可笑しくなってくる。
そして同時に叫んでいる
もっと人に触れたい、触れられたい。
ぬくもりが欲しい。
どうせ裏切られるなら、最初から信用しない。
深く関わってしまえば、それだけ傷は深くなるのだから。
痛い、怖い、寒い、だるい、嫌い、ごめん、行かないで、好き、消えないで。
もう泣かないで。
「なぁ、何を探してんの?」
わからない。
ただ怖いんだ、ずっと。
彼のことを僕は知っている。
言葉にせずとも、
僕はいなくならないよ。
<SIX LOUNGE・ナガマツシンタロウ>
◆紹介曲「 言葉にせずとも 」 作詞:ナガマツシンタロウ 作曲:ヤマグチユウモリ