ぼっちぼろまる
そうしたもの全部を、漫画は黙って受け止めてくれた。
2025年12月3日に“ぼっちぼろまる”がメジャー1stアルバム『COMICAL』をリリースしました。ジャケットは、イラストレーター/アニメーション作家のまご山つく蔵が制作。収録楽曲をイメージしたキャラクターたちが登場するアートワークに。「つよがるガール feat. もっさ(ネクライトーキー)」、「鎌倉STYLE」、「NE-CHU-SHOW」など、ぼっちぼろまるの活躍が凝縮された渾身の全17曲入りアルバムとなっております。
さて、今日のうたではそんな“ぼっちぼろまる”による歌詞エッセイを2週連続でお届け。第2弾は、収録曲「 COMICAL 」にまつわるお話です。自身の人生にとって、漫画とはどんな存在だったのか…。今作に通ずる漫画への思いを綴っていただきました。
“漫画好き”という以前に、僕はまず“コロコロコミック好き”だった。
ホビー漫画が始まるたびに胸が高鳴り、おもちゃ屋に駆け込んだ。
カードゲームの大会へ向かう日は、甲子園球児みたいに闘志を燃やした。
自分が主人公になったような気がしていた。
東京へ行ってみたい。全国大会に出てみたい。
コロコロの主人公たちと同じように、僕も何かの“チャンピオン”になれると思っていた。
けれど現実は、冷たかった。
チャンピオンどころか、地方予選も一度も突破できなかった。
少しずつ、「自分は主人公じゃないんだ」と理解していった。
―――
小学生の頃、漫画家になりたいと思っていた。
コピー用紙を4枚折りたたんだ16ページの単行本。
50冊くらいは描いた気がする。
ピカチュウが主人公で、仲間のポケモンと冒険し、あくタイプの敵に挑むバトル漫画。
どこかONE PIECEみたいなノリもあった。
今思えば不思議だけど、友達はその漫画を席に持ち帰って、ちゃんと読んでくれていた。
絵も上手くないし、展開だってきっと稚拙だったのに、続きを求めてくれる子までいた。
誰にもバカにされなかった。
あの頃、周りに恵まれていたんだなぁと思う。
でも、学年が上がり、僕より絵が上手い子が現れた瞬間、僕はあっさり筆を置いた。
“一番じゃなければ意味がない”と、思い込んでいた。
―――
中学生になってから今日まで、ジャンプを読み続けている。
お父さんが買っていたモーニングで知った大人の世界。
夜勤の休憩室で読み込んだマガジン。
ヴィレヴァンで偶然出会ったサブカル漫画の衝撃。
「ソラニン」を読んだ夜、ギターを弾きながら、
僕はまた主人公になれた気がした。
思えば、人生のあらゆる場面で、漫画はそばにいてくれた。
勝てなかった大会も、途中で諦めた夢も。
“上か下か”でしか自分を測れなかった、あの息苦しい焦りも。
そうしたもの全部を、漫画は黙って受け止めてくれたのだと思う。
僕の人生もまた、その隣にあるひとつの物語だった。
何かの作品の主人公になれなかったとしても、
僕はずっと、自分の物語の主人公だったのだ。
ページをめくる音のように、静かに人生が続いていく。
きっと僕は、おじいちゃんになって死ぬ日まで、ジャンプを読むのだと思う。
それ自体が、僕の物語の大事な伏線のひとつだからだ。
<ぼっちぼろまる>
◆紹介曲「 COMICAL 」 作詞:ぼっちぼろまる 作曲:ぼっちぼろまる
◆メジャー1stアルバム『COMICAL』
2025年12月3日配信開始
<収録曲>
01. -目次-
02. 超!うたうぼっちのテーマ
03. 桜風
04. タタリダンス
05. おとせサンダー
06. -質問を募集するコーナー-
07. つよがるガール feat.もっさ(ネクライトーキー)
08. 鎌倉STYLE
09. NE-CHU-SHOW
10. イケてるパーカー
11. -挿絵-
12. ハロ
13. 魔法ぽい
14. さよならグリーンデイズ
15. シン・タンタカタンタンタンタンメン
16. COMICAL
17. -あとがき-