SIX LOUNGE
ねがいごと
2025年10月1日に“SIX LOUNGE”がEP『燦燦』をリリースしました。今作には、以前から親交の深いバンド“TETORA”より、ボーカル上野羽有音を迎えた記念すべき初コラボ楽曲「おどるらいおん feat. 上野羽有音(TETORA)」を含む全5曲が収録されております。
さて、今日のうたではそんな“SIX LOUNGE”のナガマツシンタロウによる歌詞エッセイを3週連続でお届け。最終回は収録曲「 儚げブルー 」にまつわるお話です。夜を迎えるクリスマスイブの日、こみ上げてくる感情。今、心に浮かぶねがいごと、本当に欲しいものは…。ぜひ歌詞とあわせて、エッセイを受け取ってください。
甘いにおいがする。クッキーを焼いたようなにおい。満腹である。それなのに、食べてください。美味しいですよ。幸せの味ですよ。そう無理やり口にねじ込まれているようで、あまり気分がよくない。
目当ての品物はなかった。居心地の悪さが増す。逃げるように外に出た。吐く息が白い。しっかりこの身体は暖かい。僕はここにいる。なのに、ずっと透明人間みたいな気分だ。背中に力が入る。
時計を見上げる。
12月24日 17時37分
ゆらゆらと人が行き交う駅前に、今年もイルミネーションが灯る。
去年も見た風景。去年も聴いた曲。そこにぽっかり空いた記憶。
駆け抜けていくような時間の流れに、振り落とされてしまいそう。もしかしたら、もう落ちているかもしれないけど。どれだけ頑張っても追いつけない。
暖かい部屋の中に小さなクリスマスツリー。
丸をつけたおもちゃ屋の広告。
サンタクロースは親だって気付いた頃、大人は笑顔で嘘をつくんだと知った。それも正義なんだね。ど平日の昼間から満室のラブホテル。不倫はサブカル。
フィルターギリギリまで吸い切ったタバコをゴミだらけの灰皿に捨て、駅前を振り返る。胸の中のアクが喉まで上がってきた。
やっぱり、まだ家には帰りたくない。
可哀想だね、ずっと寂しかったんだね、そう言われたい。きもいですよね。そうだね、気持ち悪いんですよ。だから誰にも言えない感情は胸の中にしまい込んで、いつか自分でもよくわからなくなってしまうんだ。
何を楽しいと感じていたっけ。
上手な愛され方って、何だっけ。
きれいに騙されている時の顔は、どんなだっけ。
自分より大切な人を傷つけた時
それ以上に何が欲しかったんだっけ。
今夜も満室のラブホテル
人が好きだ
温もりが好きだ
くだらないことで笑える世界が好きだ
それでも
人が怖いのは
捨てられることが怖いから
すれ違っていくことが怖いから
最後に
裏切ることが怖いから
変身できるおもちゃはいらない
甘いだけのクッキーもいらない
可愛くなれるアメもいらない
誤魔化せる薬もいらない
すべてをゆるせるこころがほしい
<SIX LOUNGE・ナガマツシンタロウ>
◆紹介曲「 儚げブルー 」 作詞:ナガマツシンタロウ 作曲:ヤマグチユウモリ
◆EP『燦燦』
2025年10月1日発売 <収録曲>
1 ロックンロール
2 おどるらいおん feat. 上野羽有音(TETORA)
3 愛don't OK
4 儚げブルー
5 ロリギャングスター