恋をしていたその時が、こんなにも永遠になるとは。

2021年10月27日に“藤田麻衣子”が活動15周年を記念したメジャー6thオリジナルアルバム『忘れられない人』をリリースしました。今作は、藤田麻衣子が15年間の音楽活動で出会った、忘れられない出来事、忘れられないエピソードなど“忘れられない○○”をテーマに歌詞を綴った、彼女自身の過去と未来を紡ぐアルバム作品となっております。
 
 今日のうたコラムでは、そんな最新作を放った“藤田麻衣子”による歌詞エッセイをお届け!綴っていただいたのは、今作に収録の新曲「手錠 (duet with 平川大輔)」に通ずるお話です。新しい恋がしたいのに、忘れられない恋を思い出しては「もう一度、あの頃のように…」と願ってしまうあなたへ。是非、歌詞と併せてこのエッセイを受け取ってください。



思い出は美化されて残る。時間が過ぎるほど、さらに戻れない日々が愛しくなる。別れた理由が必ずあったはずなのに。

恋に年齢は関係ないし、若い時からたった1つの恋に時間をかけている人はもちろんいるとは思うけれど、10代20代の頃の方が出会いもまだあったし、恋のチャンスもあったように感じる。大人になるほど、出会いが少なかったり、フリーの人が少なかったり、先読みしすぎて行動に出る自分がいなくなったり、新鮮な気持ちがあまりないから心踊らなくなったり、とにかく恋が難しい。新しい恋をしなければ、過去を忘れるのもなかなか難しい。

女性は上書き保存だと言われるけれど、新しい恋をしても消えない恋もある。もちろん上書き保存は正解だとも思う。


もう一度、あの頃のように話ができたら。
もう一度、あの頃のように楽しく会えたら。
もう一度、あの頃のように愛し合えたら。

もう一度、あの頃の気持ちになりたいのだ。

一緒にいた時間を超えるほど、思い出す時間の方が長くなって、なんでもなかった一瞬一瞬が宝物だったことを知る。恋をしていたその時が、こんなにも永遠になるとは。恋は本当に素晴らしいものだなぁと思う。


新しい恋をしていても、あの人の方がよかったとか、あの人ならこうしてくれたとか。比べてしまうと、思い出の中の美化されたその人には誰も敵わないからつらい。美化男を超える人なんかそう出てこない。


ただ、今ならわかる。その時だからよかったのだ。その時の自分、その時の相手、その時の環境、その位置にいたからカチッとハマった。幸せも喜びも感じたし、切なくて辛くもあった。でももしも今同じ状況になっても、きっともう違う。だから昔好きだった人には、あまり会わない方がいい。

忘れられない人がいるというのは切ない。見えない手錠を、ずっとかけられているのだから。「あんなにも誰かを好きになることは、きっともうないと思う」と思いながら生きると、ずっと満たされないのかもしれない。けれど現実を日々受け止めて生きるだけより、思い出の中に浸っている時間のほうが幸せな時もある。だから、あの頃に戻って一人浸れるような思い出がもしもあるのなら、その人は幸せだと思う。

<藤田麻衣子>



◆紹介曲「手錠 (duet with 平川大輔)
作詞:藤田麻衣子
作曲:藤田麻衣子

◆メジャー6thオリジナルアルバム『忘れられない人』
2021年10月27日発売

<収録曲>
1. 君に会いたくなる夜は(duet with クリス・ハート)
2. 人魚姫
3. 手錠(duet with 平川大輔)
4. きみのあした
5. anniversary
6. いつか
7. 臆病な恋の歌(Album Ver.)
8. プレアデス
9. 雨
10. それでも朝は来る