どうぞご自由に。

 2025年2月12日に“FINLANDS”が約4年ぶりとなるオリジナル・フルアルバム『HAS』をリリースしました。コロナ禍の時期も絶えること無くライブ活動を継続し、精力的にデジタルリリースを重ねてきたFINLANDS。今作には、この4年の間に遂げた、さらなる成長の姿を余すことなく詰め込んだ全12曲が収録されております。
 
 さて、今日のうたではそんな“FINLANDS”の塩入冬湖による歌詞エッセイを3週連続でお届け。今回は第2弾です。綴っていただいたのは、収録曲「わたしたちのエチュード」にまつわるお話。うまく生きるため、笑顔で相槌を打ち続けているあなたへ。それができなくて息がしにくいあなたへ。この歌とエッセイが届きますように。



うまく生きるための練習は多い。
高校生の時に同級生の女の子が、「あの子がモテる理由は相手の話をどんな話でも笑って聞くから」と言っていた。
その話が忘れられない。
 
つまらない話を笑顔で聞いて、相槌を打つ。
生涯で使える笑顔と相槌の数に制限があるのであれば絶対そんなところで使わないのに。
生きている間は無制限。が仇となりどこでもかしこでも使い続ける。
 
その子のことを素直に凄いと思ったし、歳をとるにつれて、意味がわかった。
バイトを始めた時に本当につまらないお客さんにもわたしは笑った。
はい、無駄笑いだなぁ。と思いながらも笑った。
 
時給のうちの笑顔だ。
 
バンドの先輩が話す打ち上げでの過去の栄光話でもわたしは笑った。
気まずいからだ。
 
そうやってうまく切り抜ける練習をして、だんだんうまくなりたくもない笑顔がうまくなり、出したくもない高い声と笑い声によく似た発声を選んで使えるようになる。
 
サービスのような笑顔と高い声と表情は、頼まれてもいないのに見えない空気に従うように生まれる。
 
練習を積み重ねて反射的に生まれているだけだ。
あぁめんどくせえ。猫撫で声も作り笑いも、見たくもない映画見ていないと話についていけない関係も、特別な人間だから愛されているという自慢話も、忘れた頃に連絡してくる男も。
 
でもそれらにどう答えるかなんて決め事じゃない、ましてや誰からも頼まれてもいない。
 
あぁ、もっと呼吸がしやすいように生きていよう。
急いで愛されよう。などと思わずに、練習した今までの息継ぎも声も顔も全て使うか使わないかはわたしたちが決めるべきである。
そしてそれらは実は求められていない場合が多く、勝手にやっていた。という事もあったりするのだ。
 
 
どうぞご自由に。
そちらもこちらも。
 
 
<FINLANDS・塩入冬湖>



◆紹介曲「わたしたちのエチュード
作詞:塩入冬湖
作曲:塩入冬湖

◆オリジナル・フルアルバム『HAS』
2025年2月12日発売
 
<収録曲>
01.ララバイ
02.わたしたちのエチュード
03.東京エレキテル 
04.ナイトシンク 
05.割れないハート
06.VS
07.ピース 
08.like like 
09.シルエット
10.キスより遠く
11.CLASSIC
12.HAS