さて、今日うたコラムではそんな“FINLANDS”の塩入冬湖による歌詞エッセイを3週連続でお届けいたします。今回はその最終回。綴っていただいたのは、収録曲「ランデヴー」に通ずるお話。今思えばろくでもないかもしれないけれど、周りから見たら無様だったかもしれないけれど、それでも愛おしく大切な思い出、みなさんにもありませんか…? 是非、歌詞と併せてこのエッセイをご堪能ください。
~歌詞エッセイ最終回:「ランデヴー」~
取り立ての免許で半同棲の恋人と要らないものを買いに行く深夜25時半のドンキホーテの安い香水の匂い。あぁ、何てノスタルジーなんだろうか。
あの10代の終わりから20代前半の日々は私にとって何よりノスタルジーを具現化した日々だった。
煌びやかな夜も終わりかけた24時過ぎに「要らない物を買いに行く」ただそれが美しかった。
店内では幾つもの香水が混ざり合った独特の匂いが放たれており、激安と張り紙のされた無くてもいいけどあったら素敵。という商品が無数に陳列されている。そこから選んだ幾つかをどうせ自堕落であろう二人の明日の為に購入し黄色いビニール袋に詰め込みR246を走って帰るんだ。
当時、私は一人暮らしをしていて、その家に恋人が転がり込む形で生活をしていた。あの部屋が私達のハリボテのアジトであって、あの部屋は世界中そのものだった。
だからあの世界を彩る事にかけては手を抜かなかったんだろう。どんな些細な欲でも満たせるようにと数の少ない選択肢の中、万全の手段を持っていたような気がする。
お金も無いのに、明日のバイトもどうせ遅刻しちゃうのに、あったら素敵じゃない? 持ちたてのクレジットカード切っちゃおうか? ろくでもないね、でもこの真夜中の逃避行には何者も敵わないのよ。
これが私達の中では言葉に成らずとも常套句として存在していたはずだ。
今思えば人としては大不正解である。迷惑をかけるな、計画的に生活をしろ、金がないなら働け、バイト休むな、そもそも部屋狭いのにカラーボックスばかり買うな、恋人にも家賃払わせろ、馬鹿が。と思う。
ろくでもない生活に何一つ頑張る事もないくせして、身の程知らずな期待を明日にかける二人の構図は無様だった。
だけどあの頃の大失敗の大不正解の毎晩のランデヴーは私の身体の栄養になり、ノスタルジーとなって正解の思い出となっているんだから不思議だ。
先日、仕事が終わってヘトヘトながら洗剤を求め向かった夜中のドンキホーテはしっかりと生活を支える便利なディスカウントショップだった。なんだか、私はドンキホーテの使い方が下手くそになった気にさえなった。
もう戻らないであろうあの無様なランデヴーがなんて、あぁ、なんて愛おしいんだろうか。まぁ、戻りたくはないけれど思い出として存在してくれてありがとう。と思うばかりだ。
ドンキホーテにいる恋人達、そして私のノスタルジーへ歌うランデヴーという歌です。
平塚のドンキホーテ様、本厚木のメガドンキホーテ様、大変世話になりました。
<FINLANDS・塩入冬湖>
◆紹介曲「ランデヴー」
作詞:塩入冬湖
作曲:塩入冬湖
◆3rd Full Album『FLASH』
2021年3月24日発売
<収録曲>
01.HOW
02.ラヴソング
03.HEAT
04.テレパス
05.Stranger
06.ナイトハイ
07.ランデヴー
08.ひかりのうしろ
09.Silver
10.Balk
11.UNDER SONIC
12.USE
13. まどか(FLASH ver. )